人はみんな、心の中にいつまでも消えない小さくて暖かなともし火を持っている。
雨や風からその手で大事にまもって、たまには少し息を吹きかけてみたり、遠くからそっと見守ってみたり、そうやって今にも消えそうな小さな炎が、いつかは何があってもびくともしない強い火種になるんだろう。
子供みたいに泣きじゃくり、抱きしめ合った尊い時間はいつまでも消えずゆらゆらしている。
もしももう、心から期待できなかったり誰かを愛しすぎてはいけないと納得してしまったら
見えないところで通いあったり、人の一番あたたかくて柔らかいところを感じることなんて、もう出来ないのかもしれないな。
季節が変わって行くみたいに、大事だったあの人たちやあの音楽や、あの場所が、自分の隅っこに追いやられていくなんて。少しずつ色や匂いが消えていって、また新しい季節が始まる。そうやって新しく進んで行かなきゃいけないんだよ、なんて、だってあまりにも暴力的ではないか。
そんなことでさえ自分の意思で決められないなんて、なんでかいつだって他人本位だ。